【今回の変革者】
株式会社ゲート・ワン
取締役COO 速水大剛さん、社長室長 松岡豪さん、社長室 佃康平さん
株式会社ファミリーマートのグループ会社「株式会社ゲート・ワン」。直接採用したプロパー社員や、ファミリーマートからの出向社員、ファミリーマートの親会社である伊藤忠商事株式会社からの出向社員などメンバーは様々です。異なるカルチャー、バックグラウンドの社員をどうまとめていったのか、価値観が異なる社員のベクトルを合わせるためどうしたのか、取締役COO 速水大剛さん、社長室長 松岡豪さん、社長室 佃康平さんにお話を伺いました。
多様なバックグラウンドを持つ社員構成だからこそ、誰もが共感・納得できるバリューを目指した
ー まず、皆さんの役割やミッションを教えてください。
弊社はファミリーマートのデジタルサイネージ「FamilyMartVision*」へのコンテンツ配信を行うメディア事業を一手に担う会社として、2021年9月に創設されました。COOである私(速水氏)のミッションはメディア事業を着実に軌道に乗せつつ、事業運営に必要な組織体制・ケイパビリティの見極めと、創立されて間もないエネルギーに溢れたこの組織を1つのベクトルに向けていくことでした。社員は、当社が直接採用したプロパー社員に加えて、ファミリーマートや伊藤忠商事等からの出向社員が在籍しており、多種多様なバックグラウンドや価値観のメンバーで構成されています。そのため、事業や仕事に対するマインドを同じ方向に向かわせる必要があると考えていました。
ー ミッションを達成するために取り組んだことを教えてください。
価値観が異なる社員のベクトルを合わせるため、全員から共感されるビジョンやバリューを策定することに決めました。特にバリューに関しては、意見取りまとめ・分析ツール「VISITS forms」を導入し、社員たちの意見を反映させることに。収集したアイデアをもとに議論を進め、最終的に5つのバリューが決定しました。
ー プロジェクトの詳しい流れや苦労した点を教えてください。
はじめにマネジメントやチームリーダー層による議論を重ね、ビジョン「ハミダシテル?」が決定しました。このビジョンに決まった背景として、当社のような規模でデジタルサイネージビジネスを手がけている前例はありませんので、集まった社員たちには、新たな成功事例を築かなければならないという意識や、新しいチャレンジができそうといった期待がありました。そのため、社員が新しいことに挑戦できる風土を築き、一人ひとりの自主性に重きを置いて成長し続ける会社になっていこうという思いを込めて「ハミダシテル?」というビジョンを策定しました。さらに、ビジョンを達成するためのバリューは社員の思いを汲み取った納得感のあるものにしたい、社員自身にも自分の意見や思いが反映されたと感じてもらえるものにしたいと考えました。ただ、全社員の意見や共感を客観的に知るにはどうすれば良いかというところで悩んでいました。そんな時、ただのアンケートツールではないVISITS formsに出会い、私たちが目指していたバリュー策定の進め方にぴったりだと思って導入を決めたんです。
ー では、どのようにしてバリューを策定したか教えてください。
いきなりバリューのアイデアを収集するのではなく、まずは上位概念となるビジョンに対する理解を深め、各自で咀嚼してもらうため、ビジョン策定の意図や解釈を全社員に説明する場を設けました。その後、ビジョンを実現するために求められるバリュー、自分が大切にしたいバリューを各自でよく考えてもらったうえで、VISITS formsで提出してもらいました。当時30人ほどだった社員全員を対象に行い、提出された意見は約80個にのぼりました。そして、全員の意見提出と匿名での相互評価を踏まえて導き出されたバリュー候補をもとに、最終的に5項目を当社のバリューとして正式に策定しました。その後、全社ミーティングで発表し、それぞれが持つ意味はもちろんのこと、どのような意見が提出されてどのようなスコアが算出されたのかも開示して、オープンで納得感のあるものとして社員に受け入れてもらえるようプロセスも工夫しました。
全社員からアイデアを募集し相互評価した結果、新たな発見も
ー 社員の皆さんの反応はいかがでしたか?
VISITS formsには相互評価するセッションがあるため、他のメンバーのアイデアに目を通すことによって、自分の回答との比較から自身の意見を再確認することができたという声やメンバーへの理解が深まったという声が聞かれました。また、最終的に選ばれたバリューに対する納得感が高まった、自分たちが能動的に関わって決めたバリューなんだという意識が醸成された、さらに自分のアイデアが選ばれたメンバーからは純粋に嬉しかったという話もありました。
ー プロジェクトを主導した皆さんの感想や気づきも教えてください。
相互評価の結果を見てみると、多様なメンバーが集まっているにもかかわらず、ゲート・ワン社員として大切にしたい価値観の基礎的な部分は共通していることが分かりました。出身会社やバックグラウンド、この会社での役割はそれぞれ違えど、目指しているところは変わらないと再確認できたことも収穫でした。ただ、基礎的な部分は共通している中でも、提出された意見の表現や視点、視座などはそれぞれの個性が表れており、様々なバックグラウンドを持つからこその多様性も垣間見られたと思っています。さらに、他のメンバーの考えに触れることで「ダイバーシティの意識づけ」もできました。異なることは悪いことではなく単に違うだけであり、そこに新たな発見や新たな価値があるという意識が社員の中に広まったと感じています。社員一人ひとりが「ある程度の考え方や意見の違いは当然あってしかるべきだ」という柔軟さを持つことが建設的な未来に繋がりますし、今回のバリュー策定プロセスを通してそのことを実感してもらうことができました。
ー プロジェクトを通しての成果を教えてください。
今回、全員参加型のバリュー策定プロセスを実行したことで、社員が「チャレンジして良い会社なんだ!」と再認識する良い機会になり、実際に足元のビジネスにおいてもお引き合いが明確に増えています。また、採用や人事評価の側面でも良い影響があり、例えば採用活動においては候補者の方から「何を大事にしている会社ですか?」と問われた時にビジョンやバリューの具体的な話ができるようになりました。評価に関しては人事評価の基準の一つにバリューを組み込んでいて、社員たちにもバリューの体現が大切だという認識は持ってもらえています。自分たちが体現すべき価値観や考え方が明確になり、自信を持って行動に移せるようになったことが今回の最大の成果だと感じています。
ー ビジョンやバリューを活かした新たな取り組みがあれば教えてください。
毎月1回、ビジョン「ハミダシテル?」から命名したラジオ番組「ハミラジ!」を配信しています。MCとして私(佃氏)が毎回ゲスト(社員)2名を招いて1対2の会話形式でゲストのことを掘りさげ、その人らしさを引き出すなど、オープンコミュニケーションが取れる職場風土を醸成することで社員のエンゲージメントを高めるためのアプローチです。他にも、細かい取り組みですが、決定したバリューそれぞれのSlackスタンプを作り、バリューを体現している人にそのスタンプで応じるような文化も定着しつつあります。今後も普段の社員同士の会話にそれぞれのバリューが共通言語のように飛び交う雰囲気を目指していきたいと思います。
※FamilyMartVisionとは
全国47都道府県にあるファミリーマートには、毎日1,500万人以上のお客さまが訪れます。株式会社ゲート・ワンは、このお客さまとの接点を持つファミリーマート店舗をメディアと捉え、全国のファミリーマート店内に設置される大画面のデジタルサイネージ「FamilyMartVision」から、旬なエンタメ情報や、アート、ニュース、地域情報等、来店されるお客さまへ、様々な魅力あふれる映像コンテンツを配信しています。2023年10月時点で約7,500店へFamilyMartVisionが設置されており、今後設置可能な全店への拡大を目指しております。