【今回の変革者】
BIPROGY株式会社 金融ソリューション本部 市場系ソリューション部 スペシャリスト
近本 拓也さん
誰もが気軽に新規事業アイデアを創造できる雰囲気に
ー まず、近本さんの担当業務や変革したいと思われていたことを教えてください。
私は金融ソリューション本部に所属し、戦略の企画業務を担っています。既存ビジネスから踏み出す一歩として新規ビジネス創造が重要ですが、一人ひとり現業がある中で時間を割くのは容易ではありませんでした。限られた時間の中で、多数の新規事業アイデアを効率的に収集し、より質の高い意見を見抜いて実際の事業化へ結びつけたいと考えていました。そして「誰もが気軽に参加できるイベントを通して風土を醸成する」ことを決めました。
ー 「風土醸成」とは、どのような状態を目指しましたか?
社員一丸となってアイデア創造に取り組み、組織全体で「新規ビジネスを生み出そう」という意識が高い状態です。新しいビジネスへ関わるチャンスに手を上げてくれる人に、その機会を提供する環境を整えることが私の役割だと思っています。そのためには、新規事業に直接携わらないメンバーの理解やサポートも欠かせません。組織全体の意識を高め、風土を醸成するために“全員が参加できるイベント”にこだわりました。自分は新規事業と関係ないと思っていた人、興味のなかった人も、ポジティブに参加してもらえることを目指して企画しました。
自分自身が「新規ビジネスを生み出したい」という強い想いがあった
ー 会社の風土を変えるのはかなり大変だと思いますが、改革を決意された背景を教えてください。
私自身が「新規ビジネスに取り組んでみたい」という想いが強かったんです。しかし、社内では実現するのが少し難しい雰囲気がありました。そこで、新たなアイデアを提案し、新規事業を生み出しやすい環境にするとともに、周りにもその想いを理解してほしいと考え、様々なツールを探しました。
ー イベント実施の流れを教えてください。
アイデア創造のために今回導入した「VISITS forms」は設問や評価基準を自由に設定することができるんですが、そこが肝になります。今回はVISITS社から提案された5W1Hを使ったアイデア創出を取り入れることにしました。まずは「Who」「Where」「When」の選択肢を用意し、その状況における顧客のニーズを記載。そのニーズに「What」、つまりシーズ*を選び、ニーズとシーズの組み合わせからソリューションを回答する流れとしました。各選択肢を当社のお客様や当社が提供可能な技術やサービスにすることで、実際にビジネスとして展開できそうなアイデアがいくつも出てきました。アイデアを相互評価するレビューセッションでは、ニーズとソリューションそれぞれに対して評価基準を設けました。ニーズに対しては共感度と未実現度、ソリューションは新規性と有効性にすることで、より筋の良いアイデアを見極めることができました。
*シーズとは、企業が持つ独自のノウハウや技術力、素材、企画力、アイデアなどを指す。
ー 結果や皆さんの反応はいかがでしたでしょうか?
約100人のメンバーが参加してくれました。提出されたアイデアの質が高く、上位のアイデアは事業化が叶うのではないかと期待が膨らむものも多くありました。仮にソリューションのスコアが低くてもニーズのスコアが高ければ、今後そのニーズだけを取り出してアイデアを考える活動などにも繋げられそうです。匿名で相互評価するため、「他者のアイデアから刺激を得た」という感想があったり、主観を排除したデータドリブンな結果が得られたりしました。その他メンバーからは、「新規ビジネスを考えるきっかけになった」「自分でも驚くほどアイデアが出せた」「定期的に実施してほしい」というポジティブな声が多く、熱量高く取り組んでくれたことが嬉しかったです。さらに、今回のプロジェクトをきっかけに実際に風土が変わってきているのを感じます。新規事業を始めるなら参加したいという人も出てきており、本当にやって良かったと感じました。
ー 現状と今後の展望を教えてください。
上位の質の高いアイデアを中心に、事業化を検討する4〜5人のチームを複数編成し進めています。提出されたアイデアを育てているチームもあれば、さらに新しいアイデアに発展させるチームなど、皆さん前向きに取り組んでくれています。既存業務と並行になるため、ある程度の期間を設けていますが、先々では事業化案を提出、審議、実行へと繋げることを目指しています。日本では、失敗するリスクへの不安感や市場の不透明さなどを理由にイノベーションや革新的なサービスが長らく起こせていません。もちろん当社でも大きな新規ビジネスを容易に創造できるとは思っていませんが、今回のようなイベントを通して組織を徐々に変化させ、将来の日本のビジネスの発展に貢献できるようこれからも取り組みを続けていきたいと思います。